アネロパックをお使いいただいている皆様の疑問にお答えする「嫌気性菌なんでも相談室」です。
臨床検査、食品検査、研究機関などアネロパックをお使いの皆様の疑問にお答えします。
質問は下記、「質問箱」からお願いします。

Qアネロパック嫌気で何日間嫌気培養が可能でしょうか?
  • 角型ジャー  約3週間
  • パウチ袋   約2週間

となります。
嫌気指示薬(酸素濃度0.1%以下でピンク色の呈色)を入れて頂くと嫌気状態の確認もできるため、嫌気培養する際は一緒に使用されることを推奨いたします。

文責:霜島正浩

Q嫌気性芽包菌検査で嫌気性パウチで培養された黒色集落を釣菌する際の開封の仕方はどのように行うのが適切でしょうか?

白金線を嫌気性パウチに突き刺して白金線の直径分の穴をあけ、釣菌して頂ければと思います。
取りずらい場合は、少しおきめの穴をあけても良いと考えられます。

文責:霜島正浩

Q初代培養が嫌気培養の方が発育がよいと言われる菌種にはどのようなものがありますか?

臨床的に重要な菌種は、Actinomyces属だと思います。

 

口腔のActinomyces属発育条件は、種によって通性嫌気性から嫌気性まで様々で、二酸化炭素の存在下の方が良く発育するものもあります。アクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)、オドントリティカス(A. odontolyticus)、オリス(A. oris)などは、歯ブラシをしてきれいになった歯の表面に最初に定着する、いわゆる初期付着細菌として注目されています。歯垢中でアクチノマイセスが増えると、すべてではありませんが、歯と歯ぐきの境目や、奥歯の噛み合わせの面に虫歯(う蝕)を作ったり、歯肉炎という歯ぐきの炎症の原因になります。アクチノマイセス・イスラエリィ(A. israelli)は酸素があると発育できない嫌気性細菌で、時に顎放線菌症という重篤な感染症を引き起します。

Actinomyces属を嫌気性菌用血液培地で嫌気性培養したActinomyces属の集落は,3日くらいで赤色または黒色に着色するもの (A. odontolyticus), 臼歯状の集落を作るもの (A. naeslunndii,A. israelii)、そして正円の不透明の集落(A. myeri)など、いくつかの集落型があります。またBHI寒天培地、GAM寒天培地など血液寒天として使用しない透明~半透明の寒天培地で純培養して、まだ集落が肉眼でははっきり見えない時期 (一夜培養で)に培地表面を低倍率の顕微鏡で拡大して見ると通常の細菌は大きく成長した時と同じく正円に見えるのですが、あるActinomyces属は糸状菌のようにクモ(spider)状に見えてくるものがあります。これはA. naeslunndii,A. israeliiに特徴的な所見として有名です。

文責:霜島正浩

Q嫌気性菌用培地を開封後、使い切らず余った場合は、どのように保管すればいいですか?

臨床材料や菌を塗布する際に、培地が還元された状態にあることが望ましいため、嫌気性菌の検出率をあげるためにも、培地の保管はとても大切な事になります。日常の検査現場で対応できる方法は、下記の2種類になると思います。

  • 当社のアネロキープを使用する方法です。動画にて掲載されていますので、こちらのページにて確認ください。
  • 培養と同様に、嫌気ジャーに入れて頂く方法となります。この方法の場合は、少し培地が乾燥しやすくなりますので、注意が必要です。

文責:霜島正浩

Q嫌気性菌と偏性嫌気性菌 の違いはなんですか?

嫌気性菌には「通性嫌気性菌」と「偏性嫌気性菌」があります。 いずれも酸素呼吸ではなく発酵によってエネルギーを獲得しますので 増殖に酸素を必要としません。 一方、酸素は活性酸素となり、細菌の増殖を抑える場合があります。 酸素があっても増殖できる嫌気性菌が「通性嫌気性菌」で 酸素があると増殖できない嫌気性菌が「偏性嫌気性菌」です。 通性嫌気性菌のなかには、酸素があっても死ぬことはないが 酸素がない方が増殖しやすい、という菌がいます。 虫歯の原因菌であるミュータンスレンサ球菌がその代表です。 一方で、歯周病の原因菌の大部分が偏性嫌気性菌です。 食中毒で有名なボツリヌス菌も偏性嫌気性菌です。 一般的には偏性嫌気性菌を嫌気性菌と呼びます。

(株)スギヤマゲン 霜島正浩

QBifidobacterium breveはグラム染色で陰性にも染まりやすい菌なのか?
  • Bifidobacterium breveは菌体の端が二股に分かれたグラム陽性桿菌で、ヒトや動物の消化管に生息し、probioticsにも使用され本来は人体に有益な細菌となります。感染症としての報告は菌血症や髄膜炎など数例の報告があります。培養が難しいため、グラム染色像が大切となります。
  • 本菌のグラム染色像は同じグラム陽性桿菌のCorynebacterium属 やListeria属 、Bacillus属 、Clostridium属 とは明らかに異なり、V字やY字型に分岐した特徴的な形態をしているため、グラム染色所見からBifidobacterium属との推定は可能であります。
  • 染色性は安定しています。全体的にみれば、陰性に染まる場所もありますが、基本的に陽性で確認されます。又菌体の端が二股に分かれているのが特徴になりますので、判断材料の一つになります。
  • グラム染色の像は、色々な状況によっても変化致します。そのため像だけで判断するのではなく、菌体の形、材料、年齢等をかみ合わせて判断頂く事が大切となります。又お使いの染色液の特徴も再度、確認ください。

文責:霜島正浩

Qケンキポーターでの嫌気性菌の生存時間はどの程度なんでしょうか?

厳密にすべての嫌気性菌を網羅しますと、下記URL資料の様に、数時間となります。検査センターとしても、この点は理解した方が良いと思います。
但し、一般的に臨床で問題になるような菌に関しては、冷蔵にて、24時間くらいは、生存可能との認識で良いと思います。多くの菌で幅がありますので、厳密なデータはありません。検査センターとしては悩ましいところですが、24時間を一つの目安にすることが良いと思います。

参考資料

Qアネロパック 嫌気培養用 アネロパウチ ケンキ についてですが、パウチを正常使用した際の嫌気培養における正確な気圧について情報はありますでしょうか?

アネロパウチ・ケンキは、A-58 パウチ袋(小)やA-65 Wチャックパウチ袋にシャーレ2枚を入れて嫌気培養すると、約1時間で酸素ゼロ、CO2が15%以上になるよう設計されています。
吸収する酸素より発生するCO2がややすくない傾向があります。そのため、薄型ジャーなどの固型容器に使うとやや陰圧になりふたが開けにくくなることがあります。袋の場合、フレキシブルですので袋内と外は同圧です。
薄型ジャーに使った場合の陰圧の程度は、剤の個体差(CO2の発生量がわずかに異なる)や発生したCO2が培地に溶け込んだりしますので一概には言えません。袋に使う限り気圧は一定です。

Q口腔内のActinomyces spp.の培養を抗菌薬を添加したBHI寒天に培養しているのですが、目的菌以外の口腔内常在菌を抑制できません。より良い抗菌薬があれば教えていただきたい。

腔内常在菌を抑制してActinomyces spp.を分離するのはかなり難しいと思います(感染病巣部のドルーゼなら分離しやすいですが)。
Actinomyces spp.は発育が遅いので常在菌が多いと先に増殖してしまいます。いずれにしてもてActinomyces spp.の分離には、ABHK寒天培地などの嫌気性菌用の血液寒天培地のほうが好ましいと思われます。陰性桿菌抑制用にPEAを加えたものを使用したり、アミノグリコシドディスクを置いたりすれば好気性菌の抑制ができると思いますが、それでも口腔内から分離するのは難しいかもしれません。

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