コールドチェーン、この言葉が登場したのは、1950 年アメリカの調査報告とされています。
日本で一般に公表されたのは、1965 年に当時の科学技術庁の資源調査会環境技術特別委員会から出された「食生活の体系的改善に資する食糧流通体系の近代化に関する勧告」(コールドチェーン勧告)※1と言われています。
これ以降、低温流通機構、と訳されたコールドチェーンの進化によって、0~10°Cの冷蔵配送、-15°C以下の冷凍配送が日本全国に拡大しました。劇的にシェルフライフが延長された生鮮品や冷凍食品の普及によって、日本人の食生活は飛躍的に向上したといえましょう。

※1勧告事項
食料流通の改善にあたっては、加工、品質保持、貯蔵、輸送、等級・規格および検査、情報など流通を構成する主要
機能のすべてにわたって、調和と均衡のとれた体系的改善が必要である。このためには、政府、公共機関、民間企業、生産者および消費者おのおのの機能分担を明確にして、当面次のことを積極的に推進する必要がある。

  1. コールド・チェーン(低温流通機構)の整備
  2. 食品の等級・規格および検査制度の確立
  3. 食糧流通に関する情報体系の整備
  4. 生産地、中継地加工体制の確立
  5. 食糧流通に関する研究開発(許容温度時間、加工、包装、等級・規格)

一方、医薬品の流通については、温度管理に加え、偽造薬や不良医薬品、不正流通、強奪など多くの懸念事項があり、サプライチェーン全段階で医薬品の品質を維持するため、各国でGDP:Good Distribution Practice(実践流通規範)※2を採択しています。

※2GDP:Good Distribution Practice
製造業者から薬局、または医薬品を公共に供給する承認(資格)を有している個人に至るまでのサプライチェーン全段階で医薬品の品質が維持されることを保証する実践規範のことであり、医薬品品質保証の一環である。
30 ヶ国以上が GDP を採択しているが、現状では各国ごとに医薬品の流通に関する事情が異なり、各国間で整合していない。

一例

  • WHO:WHO Good Distribution Practice for Human Use
  • 米国:Good Storage & Shipping Practices(GSP)
  • EU:Guideline on Good Distribution Practice for Human Use
  • 英国:Good Distribution Practice ( GDP)
  • オーストラリア:Good Wholesaling Practice(GWP)
  • 中国:Good Supply Practice (GSP)
  • 日本:Japanese Good Supplying Practice (JGSP)→2014年6月1 日から、PIC/S Guide to Good Distribution Practice
    (GDP) for Medicinal Products が施行されている。ただし、表現は異なるものの内容は同じ。

各国の流通事情は異なっても、温度管理の必要性は共通です。特に、医薬品の温度管理は、食品を対象とした構築された冷蔵温度管理よりもさらに厳しく、2~8°Cや2~6°Cの厳密な管理が必要とされることが多く、既存のコールドチェーンでは十分に対応できません。

株式会社スギヤマゲンは、創立以来、研究フィールドの皆様が効率よく検討できる理化学機器をご提供することを社是としてきました。あるとき、お取引先から、「真空断熱材」の新たな用途がないか相談を受けました。真空断熱材は、高い断熱性能を有し、冷蔵庫に使われてます。
そこで、スギヤマゲンは、非常に厳密な温度管理を必要とする医薬品の定温輸送容器の断熱材として適用できるのではないかと考え、定温輸送容器の開発に着手しました。2005 年、真空断熱材を用いた、医療用・バイオ研究用向けの保冷、保温容器として「バイオボックス」を発売しました。

ところが、数年後、お客様から、ある治験薬の流通で、どんな環境でも2~8°Cの温度を絶対に逸脱できないので、真空断熱材を使った「バイオボックス」であっても不安が残るとのご相談をうけました。
お客様の相談には何としてでもお応えしたいスギヤマゲンは、部材同士の接手部分、ボックスの辺や角などのわずかな隙間からの熱の流入を防ぐなど、容器の熱設計を根本から見直して、断熱性能を大幅に向上させた真空断熱輸送容器「バイオボックスR・プラス」を開発し、2011 年、発売に至りました。

 

生産・輸送・消費のすべての過程で、同一の温度帯を維持、管理し続けるコールドチェーンは、物流の一つの形として確立されたとはいえ、物流のシステムや方式は利用者のニーズに合わせて日々進化していますし、社会背景も刻々と変化しています。特に、医薬品は、再生医療の細胞や遺伝子系医薬品など、私たちの健康を守るために次々と新しいものが開発されています。これらの進化、変化に合わせて温度管理の在り方も進化する必要があり、スギヤマゲンは、お客様の要望にお応えするために、日々温度管理をとことん追求しています。
当社の強みは、数えきれないほどの実験を繰り返して蓄積した膨大なデータと、ご要望に合わせた断熱ボックスや保冷剤・蓄熱剤の設計、開発を可能とするフットワークです。

例えば、新型コロナウィルスワクチン輸送。2020 年 1 月に厚生労働省様から頂いたご要望は、全国のサテライト型接種施設に配置するための4万セットの輸送容器を3週間後から納品をはじめてしてほしい、というものでした。スギヤマゲンでは、これまでの知見を総動員して、わずか 1 か月で、輸送容器セットの緊急開発と生産のめどを立てて「保冷ボックスVB」をご提案、2月に受注し、4月完納を完遂しました。

今日、物流は、 SDGsや労働環境などの環境の変化、新しい分野の医薬品、食品衛生の法制化など、さまざまな課題、ニーズに直面しています。
スギヤマゲンは、これからも、お客様が必要とし、理想とするコールドチェーン、温度管理システムを実現するための定温輸送容器システムをご提供してまいります。
品質の追求に一切妥協しない、それがスギヤマゲンの定温輸送容器システムです。

 

製品・
サービスを探す