実験データ

マイクロダイアリシス実験

脳マイクロダイアリシス実験で定常状態の脳神経活動を正確に把握するための有効な手段となります。

図1 線条体および海馬の細胞外液中コリン

(Ch)およびアセチルコリン(ACh)の基礎レベル
 
図1A はフリームービングシステムを用いたマイクロダイアリシス法を示します。あらかじめラット線条体(Striatum)に固定したガイドカニューレにダイアリシスプローブを挿入し、フリームービング下で細胞外液中のアセチルコリン(ACh)およびコリン(Ch)量を液体クロマトグラフィー・電気化学検出器(LCEC)を用いて測定します。10μM エゼリン含有リンゲル液(バッファー)は、カニューラシーベル(TCS2-23)B 流路を通りプローブ挿入領域を灌流(ACh およびCh を回収)後、シーベルA 流路を介してサンプリングされます。毎分2μL で3.5時間灌流後に得た線条体および海馬(Hippocampus)の20 分あたりの基礎ACh およびCh 量は上図(B)に示されるように各脳領域で異なります。

図2 フリームービング、拘束ストレス、麻酔条件下の比較

図1 のフリームービング下における基礎ACh およびCh量を100%とした時、拘束ストレス負荷は線条体(図2A)および海馬(図2B)の両領域で急激なACh 増加とCh 減少を、逆にペントバルビタール麻酔ではACh 減少とCh増加を示します。これらの結果は、ストレスによる脳神経の興奮と麻酔による抑制を示唆します。このように定常状態の脳神経活動を正確に把握するためにフリームービングシステムは有効な手段となります。

図3 フリームービング下における中隔野-海馬アセチルコリン神経投射系反応

フリームービング下でラットの脳中隔野と海馬の両領域にプローブを挿入します。中隔野はカニューラシーベルB 流路を介してGABAA 受容体アゴニスト(ムシモール)で灌流刺激します。海馬はA 流路を介してバッファーを灌流し、ムシモール刺激に対するACh放出応答をモニターします(図3A)。海馬ACh 放出量はムシモール(1~100μM、20 分刺激)により用量依存性に制御されます(図3B)。この結果は中隔野から海馬に投射しているコリン神経系の活動が中隔野においてGABA 神経系により抑制されていることを示唆します。本法は各種神経投射系活動を調べる有効な方法となります。
 
ご提供:株式会社ツムラ 研究本部医薬評価研究所薬効評価研究1 グループ 五十嵐康様

胆汁採取実験

同一動物での胆汁頻回採取や長期採取実験への応用が期待できます。

図4 測定法の概要

ウレタン麻酔下にて胆管の肝臓側および十二指腸側に挿入したカニューレは、皮下を這わせて頚背部に導出しU 字コネクターで連結します。この胆管バイパス手術の翌日、U字コネクターを外し、十二指腸側は栓をします。肝臓側には胆汁採取用チューブを連結し、カ ニューラシーベル(TCS2-21)A流路を介してフリームービング下で胆汁を採取します(図4)。
 
また、B流路を静脈内カニュレーション用とすることにより、薬物投与などの併用が可能になります。
さらにU字管を再連結することにより、後日同一動物を実験に用いることができます。

図5 フリームービング、拘束ストレス、麻酔条件下における胆汁流量の比較

基礎胆汁分泌量は、フリームービング(4.70 ±0.78μL/min/100g of body weight)、拘束ストレス(5.29 ± 0.61μL/min)およびウレタン麻酔(4.96 ± 0.03μL/min)条件の違いによる影響を受けませんでした(図5)。しかし、U 字コネクターを再連結することにより同一動物の長期胆汁採取実験への応用が期待されます。
 
ご提供:株式会社ツムラ 研究本部医薬評価研究所薬効評価研究3 グループ 三浦哲男様

血圧・心拍測定

血圧・心拍数の生体応答を評価するための有効な手段となります。

図6 血圧・心拍測定法の概要

ペントバルビタール麻酔下にて、大腿動脈および大腿静脈に挿入したカニューレは、背部皮下を這わせて頚背部に導出します。大腿動脈用カニューレはカニュー ラシーベル(TCS2-21)のA 流路およびトランスデューサーを介しポリグラフに連結し、血圧・心拍を測定します。一方、大腿静脈用カニューレは、シーベルB 流路を介して薬物注入用シリンジに連結します(図6)。

図7 フリームービング、拘束ストレス、麻酔条件下におけるニカルジピン反応の比較

図7 ではフリームービング、拘束ストレスおよび麻酔下における平均血圧とニカルジピン(カルシウム拮抗薬:1mg/kg, i.v.)による降圧作用(図7A)およびその反射性心拍数(図7B)の変化を自然発症高血圧ラット(SHR)を用いて比較しています。フリームービングおよび拘束下では平均血圧に有意な変化は認められませんが、麻酔下では有意に低下します(図7A、Pre 値)。ニカルジピン投与後の降圧作用(図7A、Post 15min 値)は、いずれの条件下においても認められます。一方、心拍数はフリームービングに対し拘束条件下では著しく増加し、麻酔下では減少傾向を示します(図7B、Pre 値)。ニカルジピンの降圧作用に伴う心拍数の反射性増加はフリームービング下で明確に認められますが、既に増加状態にある拘束条件下および抑制状態にある麻酔下ではこのような増加は認められません(図7B、Post 15min 値)。このように血圧・心拍数の生体応答を評価するためにフリームービングシステムは有効な手段となります。
ご提供:株式会社ツムラ
研究本部医薬評価研究所薬効評価研究2 グループ
後藤和宏様

採尿実験

尿の基礎排泄量と薬物の抗利尿応答をより自然に近い生理状態で得ることができる有効な手段となります。

図8 測定法の概要

ペントバルビタール麻酔下にて膀胱および頚静脈に挿入したカニューレは、背部皮下を這わせて頚背部に導出します。経時的な採尿は、膀胱用カニューレを連結 したカニューラシーベル(TCS2-21)A流路を介して行います。一方、頚静脈用カニューレは、シーベルB 流路を介して生理食塩水の持続注入および薬液投与のためマイクロインフュジョンシリンジに連結します(図8)。

図9 フリームービング、拘束ストレス、麻酔条件下におけるバゾプレッシン反応の比較

図9は、フリームービング(A)、拘束(B)および麻酔(C)下における尿量の変化とバゾプレッシン(VP、抗利尿ホ ルモン:100mLU/kg, i.v.)による抗利尿作用の変化を比較しています。各条件下における尿の基礎排泄量は、フリー ムービング(約170μL/10分)に比べ、拘束下では減少傾向(約120μL/10 分)、麻酔下ではさらに著しい減少(約 40μL/10 分)を示しました。さらに、フリームービング下で認められたVP 投与による顕著な抗利尿作用は、拘 束下では抑制され、麻酔下では全く認められません。これらの結果は、尿の基礎排泄量と共に薬物の抗利尿応答も 実験条件によって大きく影響されることを示唆します。このようにフリームービングシステムは採尿実験において 有効な手段となります。
 
ご提供:株式会社ツムラ 研究本部医薬評価研究所薬効評価研究2 グループ 藤塚直樹様